社会保険労務士の内山です。
いつもありがとうございます。
職場での人間関係やコミュニケーションにおいて、従業員の心理的な側面を理解することが重要です。今回は、人間の脳が持つ「ネガティブ・バイアス」について、その影響と対策をお伝えします。
まず、人間は進化の過程で「ネガティブ・バイアス」と呼ばれる防衛反応を身につけてきました。これは、何かを判断するとき、ポジティブな情報よりもネガティブな情報に強く影響される傾向を指します。
例えば、ある社員が上司から多くの褒め言葉をもらっても、一人の同僚からの批判が心に刺さり、考え込んでしまうことがあります。これは、たった一つの批判が全体の評価を覆い隠す「ネガティブ・バイアス」の典型的な例です。
ネガティブな思考がポジティブな思考に勝る理由として、歴史的に負の思考は脅威に結びつくことが多く、脅威には即座に対応する必要があったからです。人類の進化の過程で、負の思考は「生存に直結する脅威」に対処するための重要な役割を果たしてきました。
例えば、週明けの仕事に不安があると、週末の旅行の楽しさが減少してしまうことがしばしばあります。これも、ネガティブな思考がポジティブな思考に勝っている例です。
また、ネガティブな思考は人間の脳の進化の中で重要な役割を果たしてきました。未知の状況に対する不安や恐怖は危険から身を守るために必要であり、他者への妬みは競争心を駆り立てる力となります。
不安や恐怖があるからこそ危険から身を守り、他者への妬みがあるからこそパワーが生まれるのです。
このように、ネガティブな思考を持つこと自体は悪いことではありません。むしろ、それを適切に管理することが重要です。
ただし、ポジティブなものよりネガティブなものに強く惹かれる人間本来の傾向があるため、楽観的に物事を考えることは悲観的に考えるよりも難しく、安心させることは怖がらせるよりはるかに難しいのです。
社員をポジティブにしたり安心させたりするのが難しいのは、このためです。
ネガティブな思考を完全に排除するのではなく、ポジティブな思考とバランスをとることが重要です。部下が「できない」と悩んでいるときは、すぐに諦めずに自分のやっていることは間違っていないと信じて、長い目で自分を見られるようになることを奨励しましょう。
上司は結果が出るには時間がかかることを理解し、長期的な視点を持つことで、部下は前向きな考え方に変えることができます。