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第34回 社員の苦手を得意に変える、脳の不思議な力とは?


社会保険労務士の内山です。

いつもありがとうございます。


今回は、苦手と思うことを克服するための脳の驚くべき能力についてお伝えします。


私たちの脳は、外界の情報を五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)を通じて受け取り、処理をしています。五感の中でも「香り(嗅覚)」の情報が最も早く脳に届き、感情や記憶に強い影響を与えます


例えば、足の指先を机の角にぶつけたときの痛みは神経系を通じて脳に伝わりますが、香りは神経系を通さず、直接、原始脳と呼ばれる大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)に届き、わずか0.1秒で感情や記憶に働く海馬(かいば)を動かして過去の記憶や感情を呼び起こします


そのため「あの時の香りだ。あの人の香りだ。」と一瞬で過去の感情や思い出が甦る「プルースト効果」の経験を、皆さんも一度や二度はお持ちだと思います。


このような脳の能力は、過去の経験に大きく影響されています。子供の頃に良い体験をした香りは、大人になっても好きな香りとして残り、逆に、不快な体験をした香りは、嫌いな香りとして記憶されていることが多いです。すなわち「好き嫌いの好みは、過去の体験と紐づいている」のです。


仕事の面でもこの原理は同様で、過去の仕事体験に基づいて、好きな仕事と嫌いな仕事が分かれている可能性が高いです。

例えば、指導がうまくできずに部下のモチベーションを下げてしまった経験や、営業会議の発表資料にダメ出しされた経験は、部下の指導や資料の発表に対する不安や苦手意識の原因を生みます。

このような失敗や恥ずかしい経験を脳は「痛みの記憶」として残しており、これは同じ痛みを繰り返さないために、生存本能として記憶に残す特性で自然な反応です


しかし、脳には「痛みの記憶」を書き換えることができる素晴らしい特性も持っています。

それは新たな快感(喜びや嬉しさなど)による「快感の記憶」で上書きできるという特性です。


例えば、プレゼンで緊張して失敗してしまい、恥ずかしさや失望感を感じ「痛みの記憶」が残ったが、上司の指導のもと準備を重ね、フィードバックを受け入れながら改善し、その後のプレゼンで大きな成功を収めた際の喜びや達成感が「痛みの記憶」を「快感の記憶」に上書きできたケースと言えます。


「痛みの記憶」のままだと、永遠に苦手意識が続きます。

しかし、「快感の記憶」に上書きすることで、苦手なことも得意に変えることができるのです。


苦手な仕事を克服する鍵は「楽しい!」「成功した!」と感じる体験を積ませることです。

快感を体験する方法として、やり方を変えてみる、場所を変えてみる、情報を集めてみる、フィードバックをもらうなどの方法は、今までと異なる方法のため、快感を得る可能性が高まります。


部下が苦手なことを乗り越えて可能性を引き出すには、このアプローチが有効です。

日々の業務の中で新しい「快感の記憶」を生み出し、苦手なことを克服させましょう。

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